「おいおい。

ダメダメやないかコイツ。」

 

「えっ!?やっぱり!?

これって体よく付き合うことはぐらかしてるよね?」

 

「それもあるけど、簡単に仕事を休むような奴っていうことや。

いくらバイトや言うても社会人としてどないやねん。」

 

「あ、そっちか。

私もちょっとビックリしたんだけど、『もう少し一緒にいたい』とか『好きだよ』なんて言われて、まあいっかなんて思っちゃった。」

 

「そういうの、見逃したらあかんねん。

相手に感じた違和感ってあるやろ?

『この人大丈夫かな?』とか『それって人としてどうなの?』ってことな。

まあ竜一狼は動物やけども。

そういう違和感って、あとあと増えることはあっても消えることってほぼないねん。

相手に感じた『コイツまじか』という側面は氷山の一角であって、あとになればなるほどもっと沢山出てくるねん。」

 

「そうなんだ!

でも女の子って情が入ったり相手のことを好きになったりすると、そういう違和感って見過ごしちゃうよね。」

 

「それは絶対に見過ごしたらあかんねん。

相手の人間性、竜一狼の場合は動物性とでも言えばええんかな。

そういうのってものすごく大事やぞ。

人間性がおかしい奴とかかわってると、だんだんと自分のレベルがソイツのところまで落ちてくるねん。」

 

「なにそれ!超こわい!」

 

「分かりやすく言うと、口の悪い男と付き合ってたら、付き合ってる女性まで口の悪さがうつってくるみたいな感じや。

人間性がおかしい奴とかかわってるとな、相手の思考がうつってくるねんけど、これは単純に相手の考えに慣れてしまうということやねん。」

 

「え~。どういうことだろ?」

 

「たとえば、最初は『コイツまじかよ』と思ってたことが、相手とかかわっているうちに見慣れすぎて慣れてくるねん。

そしたらいずれ、それがふつうになっていくわけや。

人は環境に慣れてしまう生き物やからな。

しかも慣れてくるだけやなくて、今まで「ありえない」と思ってたことが「ちょっとぐらいならいいかな」と思うようになってくる。

この時点で相手のレベルまで自分のレベルが下がってるねん。

例に出すと、すごく真面目な男の子が悪い連中とつるむようになって、最初はあまりの悪さに戸惑ってたのが、そういう連中とかかわっていくことによって慣れてきて、自分も悪事に手を染めていってしまう感じや。

この場合、最初は「自分にはそんなことできない」と思ってたのが、そのうち「皆もやってるし、ちょっとぐらいならいいかな」となってるねん。

それがどんどんエスカレートしていくわけや。

分かるか?」

 

「あ~。そういうことか~。

っていうことは、私も竜一狼とずっとかかわってたら、仕事を休むことへの抵抗とかがいずれなくなるってことだよね?」

 

「もちろん、それは可能性としてはあるけど、なまけ癖のある人間と付き合ってたら、仕事を休むだけやなくて、今まで出来ていたことをサボるようになってくる感じやな。」

 

「う~ん。それはヤだなあ。

でもたしかに、竜一狼とかかわっている間は、ちょっと生活が荒れてたかもしんない。

もともと掃除はあまり得意な方じゃなかったし、部屋もちらかってたんだけど、前にもまして掃除をサボることが多くなったし、もっと部屋が汚くなったなあ。

それってレベルが下がったっていうことだよね?」

 

「そやな。

それに加えて、コイツとかかわってる間はものすごくメンタルの調子わるかったやろ?

部屋ってな。

自分のメンタルを映し出す鏡やねん。

自分のメンタルが荒れてたら部屋も同じように荒れていくわ。」

 

「うっ!気をつけます・・・。」

 

「ほんまに部屋には気をつけた方がええ。

自信ない自信ない言うてる女の子って多いけど、部屋が汚い子はまず掃除しろやっていつも思うねん。

冗談ぬきで話はそこからや。」

 

「うう・・・。耳が痛いです・・・。」

 

「大丈夫や。俺も昔は掃除片付けなんか一切できひんかったから。

今からでも十分間に合うで。

いらない物を捨てて、掃除するだけや。

それだけで心が晴れやかになるから、だまされたと思ってやってみい。」

 

「うん!わかった!」