「シゲさん!

これって、ラビ斗が私に対して今まで以上に心を開いてくれたってことだよね!?」

 

「そうやな。」

 

「やったー!超うれしい!

でもさ、このまま酔った勢いで、そのまま過去の話をしてくれてもよかったのにとも思っちゃうんだよね。」

 

「まあな。

でも、自分のトラウマとか言いたくない過去を抱えてる人間にとって、そういう話をするってかなり勇気がいることやし、精神的に負担がくるぞ。

だって、思い出したくないし、言いたくもないんやから。」

 

「そっか。

そりゃそうだよね。

あとさ、なんでラビ斗は私に対して心を開こうと思ったんだろう?

やっぱ私のことが好きだから?」

 

「それもあるやろうけど、恋愛感情があるからといって、かならずしもその相手のことを信用してるとは限らんやろ?

女性で言うと、めっちゃ好きな男やけど、いつか浮気しそうで信用できないみたいな感じで。」

 

「たしかに。

じゃあなんで信用できると思ったんだろう?」

 

「お前がそれだけラビ斗に『私はこういう動物です』って素直に自己開示したからや。

だからチー子の動物となりがちゃんと相手に伝わって、それで『信用してみてもいいかな』と思ったんやろう。」

 

「え、でも自己開示したらなんで信用しようと思うの?」

 

「考えてみいな。

相手の人となりが分からんのに、信用なんかできるわけないやん。

得体が知れへんからな。

もちろん、自己開示をして信用されへん人もいるけれど、そういう人は日常的に信用されないようなことばかりしているから、それがにじみ出てしまってるせいで信用されへんねん。

お前はそういう生き方してないんやろ?

それに自分の思ってることを素直に話そうとするやんか。

だから、信用してみようかとラビ斗は思ったわけや。」

 

「なるほど。

でもさ、この間ほかのオスをちらつかして駆け引きみたいなことしたけれど、それで『もうコイツは信用できない』みたいにはならなかったの?」

 

「チー子が謝るまではそう思ってたかもしれんな。

でも、お前は素直に謝ったし、ほかのオスなんかいないことがラビ斗には分かった。

さらに、それまでのチー子に対しての好印象の積み重ねがあったから、ちょっとした揉め事があっても、それだけで信用がガタ落ちになることはめったにない。

逆に、ちょっとした揉め事で関係性が崩れてしまうのであれば、その2人がその程度の信頼関係しか築いてこなかったっていうことや。」

 

「そういうことか~。

自己開示って本当に大事なんだね。

ラビ斗も触れてほしくない過去の話以外はちゃんと話してくれるし。」

 

「大事やぞ。

古くから言われているように、相手の心を開きたいなら、まず自分の心をオープンにしましょう、というやつや。

自分の手の内を見せてくれへん相手に、自分のことを分かってもらおうなんて思わんからな。

相手に嫌われたくないからという理由で、自分のことを話さん女性っているけれど、それが逆効果やということに気づいてない人が多い。

それに、嫌われたくないと思ったら、ボロが出ないように当たり障りのない話しかせんくなるからな。

それってドラマでたとえるなら、なんの見せ場も山場もないシーンを最後まで見せられるようなもんやから、そんなドラマの続きを見たいって思わんやん。

当たり障りのない話しかしない女性もそれと同じで、次に会いたいなんて思わんよ。

だって、おもろないねんから。

続きが気になるドラマもまた会いたくなる人も、ちゃんと作品やその人の個性や毒がかならずあるから、支持されるっていうわけや。」

 

「なるほど!

じゃあこれからも私はちゃんと自己開示していけばいいってわけね!」

 

「そういうことや。

あと、親しき仲にも礼儀ありを忘れずにな。」

 

「うん!分かった!」