「宇佐美、絶賛大安売り中やないか。」

 

「だよね・・・。

深夜に呼ばれて会いに行くとか終わってるよね・・・。」

 

「それは相手との信頼関係によりけりやけど、論点はそこじゃないねん。

お前が何度も連絡したことに対して、1ヶ月も既読スルーやったやろ?

まあ、なんの返事がないのに追撃する宇佐美も宇佐美なんやけどや。

しかも、連絡してきたと思ったらちゃんとした理由も説明せずに、『忙しかった』で片付けて、しかもいきなり深夜に家に呼び出す。

そんな相手がお前と信頼関係を結ぶつもりがあると思うか?

どう考えてもコイツ、暇そうやのに。」

 

「だよね・・・。

でも、このときの私は脳みそお花畑状態だったから、『いつかきっと向き合ってくれる』って期待してた。」

 

「宇佐美にかぎらずな、信頼関係を結んでくれない男に対して『いつか私と向き合ってくれるはず』という期待をしている女性は多いねん。

でもな、そんな期待はしても無駄やったって、後でなにかしら事件が起きてから彼女たちはようやく気づくねん。

だって、信頼関係を結ばん方が、向き合わん男にとっては都合がいいんやから。

向き合ってしまうと、相手のことを都合よく扱えへんくなるからな。

それにな、自分とも向き合えてないヤツが他人と向き合えるわけがないし、今まで人と向き合ったことがないヤツが、向き合い方を分かるわけがないんや。

『私だったらいつか向き合ってくれるはず』というのはただの過信や。

残念ながら、いくら過信して期待したところで、向き合ってくれない相手にとっては、自分という存在は相手にとってその他大勢のうちの1人にしか過ぎひんねん。

それが分からずに、『私だったら』と相手に期待してしまうのはただの自意識過剰や。」

 

「うっ、たしかに・・・。

でもさ、なんで竜一狼が自分と向き合えない動物だって言えるの?」

 

「自分と向き合うというのは、現実と向き合うということでもあるねん。

簡単に言うと、『自分にウソをつかず、逃げずに直視する』ということや。

竜一狼は、バイトがだるいからとズル休みをして逃げて、お前からも逃げてるやろ?

自分と向き合ってる人は、現実から逃げへんし、向き合えないことやったら、自分が悪者になってもちゃんと言う。

たとえば、もし竜一狼が自分と向き合える動物なら、宇佐美に対して「付き合えない」とハッキリ言うし、その前に最初からお前に気を持たすようなことは言わんやろうな。」

 

「なるほど。

でもさ、付き合うつもりはないけれど、Hしたら気持ちが変わって付き合えるかも!?みたいに思ってるオスとかはいないの?」

 

「いるよ。

でも、そういうヤツらは自分のことを知らんから、『もしかしたら』という期待で行為におよび、終わってから結局『あーやっぱ違うかー』ってなるねん。

これは、性欲から来る行動やと思ってる人たちが多いけど、もちろん性衝動はあるものの、『もしかしたら』という期待をしているようで、実は「やっぱ違う」という証拠が欲しいだけやねん。

厳密に言うと、セックスする前は「身体の相性が良かったら付き合えるかも」という期待値の方が大きいねんけど、これって見方を変えれば、付き合う決定打があるとするなら身体の相性だけということで、それ以外の部分は決め手に欠けるか魅力がないということや。

だから、セックスしたら気持ちが変わって付き合いたいと思えるかもと思ってる男のほとんどは、実は行為前からすでに付き合えへんことが確定してるねん。

自分で気づいてないだけでな。」

 

「ひどーい!

それって、オスが付き合えない気持ちを確認するために、メスと関係を持つってことでしょ!?」

 

「そういうことや。

だから、『付き合う前に身体の相性を確認したい』という類の言葉って信用したらあかんねん。

もちろん例外もあるけれど、自分のことを知らんヤツほど、付き合えない気持ちの確認作業をするな。

自分と向き合うというのは、自分を知ることや。

自分のこと知ってたら、いちいち肉体関係を結ばんくても、眼の前にいる相手と付き合うか付き合わんかは分かる。」

 

「そっかー。

でもよく考えたら、そういうオスの口先だけの言葉に期待して、関係を持ってしまうメスにも責任があるよね。」

 

「まあな。

自分の身を守るのは自分しかおらへんから自己責任やな。」

 

「だよね。

それはそうとさ、ネットに書いてあるようなオスの気を引くメッセージって、全然あてにならないね。」

 

「そらそうや。

だって、好きな異性から送ってこられるメッセージと、どうでもええと思ってる異性から送ってこられるメッセージって、受取り方がまったく違うもん。

それって女性も同じやと思うで。

言葉ってな、『なにを言うか』じゃなくて『誰が言うか』やから、言う人間が違えば受け手の印象は180度変わる。

たとえば、どんなにいい話であっても、嫌いな人から聞くと素直に受け取られへんやろ。」

 

「たしかに!」

 

「あと、画像は百歩ゆずってましな部類にしても、面白動画ってそれほど親しくない相手から送ってこられると迷惑や。

だって、動画を見る時間を奪われるし、『面白』動画なんて言われたら、面白かったっていう反応せなあかんやん。

おもろなかったら、動画を見た時間も損した気分になるし、なんの罰ゲームやねんって思うで。」

 

「そりゃそうだ!」

 

「あと、『相談したいことがある』も『過剰なほめ言葉』も、それほど親しくない相手から送ってこられると違和感しかない。

だって、相談したいことがあるって言われても、『なんでそんなに親しくないのに相談事があるの?ほかのヤツに頼めよ』って思う人がほとんどや。

 

「相手との距離感次第では地雷になるってことか。」

 

「そうや。

それに、過剰にほめられても、自分にほめられたことに対しての自覚がないなら、そのほめ言葉はひどく薄っぺらい。

竜一狼の場合やと、別に頑張ってないし尊敬できるポイントもないやん。

コイツはそれを無意識に自覚してるから、頑張りをたたえたり尊敬してるって言ったりしても響いてないし、むしろ『俺の気を引こうと必死だな』って思ってるはずや。」

 

「言われてみればそのとおりだよね。」

 

「たとえば、宇佐美にな、『宇佐美ちゃんはいつも自信満々でステキだなと思ってるよ』なんて言ってくるオスがいたらどう思う?」

 

「この動物、頭おかしいのかなって思う。

私のなにを見てんの?って思う。」

 

「そうやろ?

そやし、なんでもほめればいいってもんでもないねん。

場合によっては、ほめ言葉も相手の気分を害する毒になる。」

 

「じゃあ、思ってもないことはほめない方がいいってことだよね。

気をつけよ。

ていうか聞いて!

ここから竜一狼の本性がどんどん出てくるの!

キーーーーーー!

思い出したらムカつくーーーーー!」

 

「うん、俺が作ってるから知ってるで。」

 

「あ、そうか。」