




「うわ~~・・・。」

「やっぱヤバいよね!?ヤバいよね!?」

「うわ~~・・・。あいたた~~・・・。」

「なによ!ちゃんと言いなさいよ!」

「ちゃんと言わんくても分かるやろ。
前までふつうに仲良かった奴が急によそよそしくなって、急に飲みに誘われてついてったら、いきなりテキーラ一気しだして、介抱してたらゲロ吐かれるんやぞ。
この人、キツネとか憑いてもうたんかなって思うがな。」

「だよね!やっぱヤバいよね!変な動物だよね!」

「うん。相当な。」

「ねェ、どうしよう・・・。ぜったい嫌われちゃったよね・・・。」

「嫌われるというか、ふつうならドン引きレベルの失態なんやけど、しま男の性格を考えると、ちゃんと謝ったら大丈夫ちゃうかな。」

「う~~ん・・・。だといいんだけど・・・。
でも私が一方的に悪いから、許してくれなくても謝らなきゃだよね。」

「そやな。そこは礼儀や。」

「でもさ、ふつうに謝るだけじゃ芸がないから、ちょっとでも許してやろうって気が起きるように、なんかインパクトほしいんだよね~。
そうだ!
手紙をそえてお弁当つくって渡すってのはどう?
アイツ、料理できないからふだんろくな物しか食べてないって言ってたし!
私、料理得意なんだよね!」

「悪くない考えや。
でもな。
お前ら同じ職場やから、渡すのは社内になるやろ?
しま男はお前の手作り弁当を食べるわけやから、周りの動物に見られたら冷やかされてまうわけや。
アイツはどう思う?」

「え?嬉しいんじゃないの?
ほら、私って社内のマドンナ的存在だし、オスたちに羨ましがられてしま男もまんざらじゃないはず!」

「あのなあ。
しま男がお前のことを好きっていう前提で考えてるやろ。
ハッキリ言うけどな、まだなんとも思われてないねんぞ。
そやのに周りに冷やかされたりしたら、手作り弁当をもらった経緯を説明するのも面倒やし、むしろ迷惑になるっていうことや。」

「・・・!ひどい!
そんなにハッキリ言わなくったっていいじゃない!」

「アホか。自分の今の立ち位置をちゃんと分かっとかんとな、相手に期待するわ、相手への配慮がなくなるわで、自分の都合のいいようにしか考えへんねん。
今のお前みたいにな。そういうとこやぞ。」

「うう・・・。なにも言い返せない・・・。」

「そやから、もし弁当を作って渡すなら、ちゃんとしま男に迷惑がかからんように渡したれっていうことや。
ご飯ぐらい堂々と食べたいから、『みんなに見つからないようにこっそり食べてね』ってお願いするのも変やし、誰に作ってもらったか、もし社内の人間に聞かれたら『田舎から母親がでてきて作ってくれた』っていうことにしておいてね、とかそういう配慮やな。」

「そっか~。私が作ったっていうことをバレない方がいいんだね。
なんか複雑~。」

「ええがな別に。しま男はお前が作ったっていうのを知ってるんやから。」

「そっか・・・。そうだよね!
じゃあちょっとお弁当作戦がんばってみる!」

「あと、シャツも新しいの買って渡したれよ。」

「うん!わかった!」


