「私は安くないと言いながら、連絡先おしえてもうとるやないかい。」

 

「だって・・・。なんか、かわいそうになってきちゃって・・・。」

 

「ダメ男はな、自分のことをかわいそうに見せるのがめっちゃ上手いねん。

言うなれば、同情心をあおるプロや。」

 

「えっ!それってわざとそうしてるってこと!?」

 

「無意識でやってる奴もいるから人によるけど、竜一狼の場合はわざとやろな。

コイツの場合は、日頃からこういうことばっかりしとるやろうから、その経験の中で自分がどうすれば相手が食いついてくるか本能で分かっとるねん。」

 

「そっか~。オスの涙ってあんまり見たことないから、かわいそうっていうのもあったけど、ちょっとドキッとしちゃったんだよね。」

 

「ギャップ効果やな。

極悪なヤンキーが土砂降りの雨の中、トラックにひかれそうになった子猫を身をていして助けるとか、そういうのがギャップ効果や。

キュンとくるやろ?」

 

「くる~!!」

 

「竜一狼の場合は、パリピ系のチャラい狼というイメージを、涙を流したことによって孤独感や弱さを演出して、宇佐美の母性をくすぐったんや。

しかもその後に少年のように無邪気に振る舞うことで、ガラの悪さを払拭したというわけやな。」

 

「は~もうしてやられたって感じ。

私はまんまとギャップ効果にだまされたってわけね。」

 

「そうや。

ちなみに、よく『彼も最初はやさしかった』という人がいるけども、最初はみんな猫かぶっとるねん。

自分をよく見せるのが上手いやつなら、自分をどう見せればええかぐらい分かっとるからな。」

 

「そうだよね。最初から自分のイヤなところをさらけ出して接してくる動物とかってほとんどいないもんね。

私、バカだったな~。」

 

「じゃあもう同じ轍を踏まんようにせなあかんな。

自分が失敗した過去っていうのは、自分の努力次第で変えられることもあるけど、相手がありきの場合は付き合う相手を選ばなあかんっちゅうこっちゃ。」

 

「うん!わかった!」