「ラビ斗の顔、こっわ!」

 

「そんなこと言わないでよ~。

きっと私のことが原因でやつれちゃったんだから。」

 

「まあそうやろな。

えらい愛されとるがな。

既読になるのが早かったのは、お前とのやり取りを見返してたんちゃうか。

『あの頃は仲良かったし楽しかったよなあ』的な。

たぶんラビ斗は、まさかお前からメッセージが来るとは思ってなかったやろうし、さぞビックリしたんとちゃうか。」

 

「う~ん。

そうだと嬉しいけど・・・。

でも付き合ってないし・・・。」

 

「ていうか、なんでそんなに付き合いたいねん?」

 

「だってほら、彼氏彼女って言えるし言いたいじゃん!」

 

「ほかには?」

 

「えーと・・・。

ほら、ラビ斗と2匹でいるときに誰かに会っても、彼氏って言えるし、彼女って紹介してもらえるでしょ?」

 

「そんだけ?」

 

「も~!なによ!

曖昧な関係がイヤなの!!」

 

「曖昧な関係って言うても、『彼氏彼女』って肩書がないだけで、お前らのやってることって恋人同士となんも変わらんやん。

それに、曖昧な関係って自分で思ってるということは、自分のことを『都合のいい存在』と思って勝手に決めつけてるってことやろ?」

 

「まあ、そうなんだけどさ・・・。」

 

「ほんで、付き合ったから言うてなにが変わるねん。

肩書がハッキリしただけで今となんも変わらんぞ。」

 

「えっ!そうなの!?

いや、そうか・・・。」

 

「そらそうやろ。

お前ら2匹は、肩書が変わっただけで今までの関係が大きく変わるわけあらへんで。

ラビ斗はラビ斗のままやし、チー子はチー子のままっていうこっちゃ。」

 

「だよね。

私、付き合ったら、恋人らしいことがもっと出来るって勝手に思い込んでたかも・・・。」

 

「それって危険な考え方やぞ。

だってな、『恋人らしいこと』って良いことばかりじゃなくて悪いことも含まれるねん。

『束縛』とか『一方的な愛情の要求』も、恋人らしいっちゃ恋人らしいことよな。

『自分は彼女だから』という大義名分が悪い方に働くと、この恋人らしいことも同じように悪い方に働くねん。

それに、『彼女になったから』という理由ができてしまうと、ラビ斗が彼氏らしいことをしてくれへんかったら『ふつう、彼氏だったら○○してくれるはず』というチー子の主観から生まれたエゴまで出てしまいやすくなる。

結婚もまったく同じやな。

奥さん側が「ふつう結婚してたら」とか「ふつう旦那だったら」っていう自分の主観だけでパートナーのことを見つづけると、どんどん夫婦間の仲は悪くなる。

肩書ができたせいで関係が悪化したカップルや夫婦が大勢いることを考えると、関係性を白黒つけてハッキリさせるのは、ええことばかりじゃないってことや。」

 

「う~ん。

そうなんだけどさ・・・。

頭では分かってるんだけど・・・。」

 

「頭で分かってるっていうのは、腑に落ちてないからなにも分かってないのと同じやで。

おそらく、ラビ斗の過去を知らんから余計に腑に落ちひんのやろう。」

 

「そう!それ!

少なくともアイツの過去になにがあったのか分かれば、私ももっと折り合いがつくはずなんだよね。」

 

「それはもう少しあとになりそうやな。

とりあえず、仲直りおめでとさん!

謝罪メッセージも素直でよかったで。」

 

「ありがとう!」